6階建・30戸マンションの大規模修繕費用と標準工事項目 ― 大阪市の事例を基準に

築15〜20年を経過した中規模マンションでは、外壁・屋上防水・鉄部塗装などの劣化が進行し、計画的な大規模修繕を検討する時期を迎えるケースが多く見られます。とくに大阪市内では6階建・30戸規模の集合住宅が多く、費用レンジや工事項目の比較基準として、この規模が最も標準的なモデルケースといえます。
今回のお役立ち情報では、同条件の建物を基準として「①修繕費用の目安、②主要工事項目の内訳、③工期および施工時期の目安」を整理しています。
管理組合や発注担当者が見積内容を比較・検討する際の参考資料としてご活用ください。
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6階建・30戸マンションの大規模修繕費用相場

大阪市における大規模修繕工事の費用水準は、建物構造・立地条件・施工範囲などによって差が生じます。6階建・30戸規模の鉄筋コンクリート造(RC造)を想定した場合、総工事費はおおむね2,500万〜4,000万円前後(税抜)が目安です。
㎡単価に換算すると8,000〜12,000円/㎡、戸当たりでは約80〜130万円が想定されます。以下では、大阪市内の中規模集合住宅を対象とした一般的な施工事例をもとに、費用レンジ・内訳・工期の目安を示します。
大阪市における費用レンジ(総額・㎡単価・戸当たり)
| 規模・構造 | 戸数 | 階数 | 総費用目安 | ㎡単価 | 戸当たり目安 |
| 小規模RC(4階建・15戸) | 約15戸 | 4階 | 1,200〜2,000万円 | 約10,000〜12,000円 | 約80〜110万円 |
| 中規模RC(6階建・30戸) | 約30戸 | 6階 | 2,500〜4,000万円 | 約8,000〜12,000円 | 約80〜130万円 |
| 大規模RC(10階建・60戸) | 約60戸 | 10階 | 4,500〜7,000万円 | 約7,000〜10,000円 | 約70〜120万円 |
上記の価格帯は、外壁補修・防水更新・共用部塗装などを含む一括修繕を想定しています。駅前立地や商業地域内の物件では、足場設置スペースの制約や防護ネットの規制対応により、仮設費用が増加し、総工費が10〜15%上振れするケースも確認されています。
費用内訳の目安(仮設・外壁・防水・付帯・設計監理)
大規模修繕工事の費用構成は、以下のように分類されます。
| 工事項目 | 主な内容 | 割合(目安) | 費用目安(税抜) |
| 仮設工事 | 足場設置・養生ネット・昇降設備など | 約20% | 500〜800万円 |
| 外壁修繕・塗装 | 高圧洗浄・ひび割れ補修・塗装工事 | 約35% | 900〜1,400万円 |
| 防水工事(屋上・バルコニー) | ウレタン塗膜防水・シート防水 | 約10〜15% | 300〜600万円 |
| 鉄部・共用部塗装 | 手すり・扉・階段・配管等の塗装 | 約10% | 250〜400万円 |
| シーリング工事 | 外壁目地・サッシ周囲の打ち替え | 約5% | 150〜250万円 |
| 設計監理・諸経費 | 監理報酬・共通仮設費・管理経費 | 約10〜15% | 250〜400万円 |
| 合計 | 約2,500〜4,000万円 |
全体のうち、外壁修繕および塗装が最も高い比率を占めます。これらは外観維持だけでなく、建物の防水性能・耐久性確保に直結する工事であり、工事品質を左右する主要項目です。
一方で、仮設費用や設計監理費は削減が難しく、費用調整を行う場合は塗料グレードまたは補修範囲の見直しが主な検討対象となります。
工期と施工タイミングの目安
6階建・30戸規模の修繕工事は、概ね3〜4か月(約90〜120日)の工期を要するのが一般的です。
| 工程 | 期間目安 | 主な作業内容 |
| 仮設足場・養生設置 | 約2〜3週間 | 足場組立・防護ネット設置・安全点検 |
| 下地補修・高圧洗浄 | 約3〜4週間 | クラック補修・タイル補修・洗浄 |
| 外壁塗装 | 約4〜6週間 | 下塗り・中塗り・上塗り |
| 屋上・バルコニー防水 | 約2〜3週間 | ウレタンまたはシート防水更新 |
| 鉄部・共用部塗装 | 約1〜2週間 | 手すり・配管・玄関扉などの仕上げ塗装 |
| 最終検査・足場解体 | 約1〜2週間 | 竣工検査・清掃・引渡し準備 |
施工時期としては、降雨の少ない3〜6月または9〜11月が推奨されます。梅雨期や台風期に作業を行う場合は、塗膜硬化不良や工程遅延のリスクがあるため、発注者側で工程計画と気象条件を考慮した調整が必要です。
また、修繕積立金を活用する際には、総会決議・資金繰り計画・工事発注承認などの手続に一定の期間を要します。そのため、着工予定の6か月前を目安に計画策定・見積徴収を開始することが望ましいといえます。
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標準的な工事項目と施工内容

大規模修繕工事における工事項目は、建物全体の劣化状況に応じて変動しますが、6階建・30戸規模の中規模マンションで実施される工事は「外壁関連」「屋上・バルコニー防水」「鉄部・共用部および付帯工事」の3分類が標準構成です。
各項目は、建物の耐久性・防水性・景観維持の観点からいずれも不可欠であり、発注時に工事範囲を正確に定義することが求められます。
外壁関連(洗浄・下地補修・塗装)
外壁工事は、大規模修繕の中で最も費用比率が高く、全体の約30〜40%を占めます。主な目的は、防水性の回復と仕上げ塗膜の保護です。
施工内容は以下の通りです。
| 工程 | 作業内容 | 留意点 |
| 高圧洗浄 | 外壁全体の洗浄(旧塗膜・汚れ・藻類除去) | 目地部やサッシまわりは低圧仕上げを行う |
| 下地補修 | クラック補修・爆裂部処理・タイル張替え | 0.3mm以上のクラックはUカットシールが標準 |
| 下塗り | シーラー・フィラーによる下地調整 | 吸水性の高い下地では2回塗りを推奨 |
| 中塗り・上塗り | シリコンまたはフッ素樹脂系塗料 | 耐候性・低汚染性を重視した材料選定が必要 |
とくに大阪市内の沿道物件では、排気ガスや粉塵による汚染が発生しやすいため、低汚染型塗料(光触媒系または超低汚染フッ素樹脂)の採用が有効です。また、タイル外壁の場合は塗装ではなくタイル張替えや部分注入による補修が中心となります。
屋上・バルコニー防水工事
屋上およびバルコニー防水は、漏水防止および下階への雨水浸入を防ぐための重要工程です。一般的な中規模マンションでは、ウレタン塗膜防水またはシート防水が採用されます。
| 工法 | 特徴 | 耐用年数 | 費用目安(㎡) |
| ウレタン塗膜防水 | 複雑な形状にも対応可能。密着性が高い | 約12〜15年 | 6,000〜8,000円 |
| 塩ビシート防水 | 平場に適し、仕上がりが均一 | 約15〜20年 | 7,000〜9,000円 |
| FRP防水(バルコニー) | 硬化性が高く、軽歩行用途に適する | 約10〜12年 | 6,000〜8,000円 |
施工前に既存防水層の劣化状況を調査し、膨れ・亀裂・浮きが確認された場合は、全面撤去のうえ再施工が推奨されます。また、ドレン廻りや立上り部のシーリングも同時に更新することで、防水層の耐用年数を均一化できます。
大阪市内では、屋上に設置された設備架台や空調配管の撤去・復旧が必要となる事例が多く、見積段階で「付帯撤去復旧工事」を別項目として明示することが望ましいです。
鉄部・共用部塗装・シーリング・付帯工事
鉄部塗装および共用部仕上げは、景観維持と腐食防止を目的とする補修です。主な対象は、手すり・パイプシャフト扉・階段・照明ポール・配管支持金物などです。
| 部位 | 標準塗装仕様 | 備考 |
| 手すり・階段 | 2液型エポキシ錆止め+ウレタントップ | 塩害・排気ガス対策で厚膜塗装が推奨 |
| パイプシャフト扉 | 変性エポキシ樹脂下塗+フッ素上塗 | 紫外線劣化防止を目的とする |
| 機械室・共用廊下天井 | アクリル樹脂塗料(防カビ仕様) | 結露対策として通気性を確保 |
| 配管支持金物 | 錆落とし+錆転換材処理+上塗2回 | 配管更新時に再塗装を併用 |
同時に実施することの多い工事として、以下の付帯項目が挙げられます。
- シーリング打替え(サッシ廻り・外壁目地・タイル間)
- 共用廊下・階段の長尺シート貼替え
- 外壁看板・掲示板の改修または撤去
- 照明設備のLED化、共用配管・電線ダクト更新
これらの付帯工事は、居住者の快適性および省エネルギー性の向上に寄与し、修繕工事後の満足度を高める要素となります。とくに共用部床の長尺シート更新は、滑り防止・遮音・デザイン統一の効果があり、費用対効果が高いと評価されています。
費用を左右する3つの要因

同規模のマンションであっても、大規模修繕工事の見積金額には数百万円単位の差が生じることがあります。この差は、単に業者の価格設定によるものではなく、建物条件・施工環境・契約仕様など複数の要素が影響します。
ここでは、費用を大きく左右する主な3つの要因を整理し、見積比較の際に確認すべき着眼点を解説します。
①下地劣化・補修範囲の違い
最も大きなコスト差が生じるのは、外壁の劣化状況および補修範囲です。とくに築20年前後の建物では、コンクリートの中性化やタイル浮きが進行している場合が多く、下地補修の数量が想定より増加するケースが多く見受けられます。
| 劣化の種類 | 主な症状 | 標準的な補修方法 | 費用の目安(㎡単価) |
| クラック(ひび割れ) | 0.3mm以上の亀裂 | Uカット・シール充填 | 2,000〜3,000円 |
| モルタル浮き・剥離 | 打診で空洞音あり | エポキシ樹脂ピンニング | 3,000〜5,000円 |
| タイル剥離・欠損 | 落下・浮きが顕著 | 張替えまたは部分注入 | 8,000〜12,000円 |
| コンクリート爆裂 | 鉄筋露出 | はつり・防錆・断面修復 | 6,000〜10,000円 |
これらの補修数量が増えるほど、外壁塗装の前工程が膨らみ、結果として工期延長および塗装費用の上昇を招きます。とくにタイル張り外壁の場合、劣化診断を実施せずに見積を出すと、施工段階で補修数量が増え、追加請求の発生リスクが高まります。
見積比較時には「下地補修数量(㎡または箇所数)が明記されているか」を必ず確認し、
各社の数量設定に大きな乖離がないかを検証することが重要です。
②足場・仮設条件(敷地形状・近隣距離)
仮設足場費用は、修繕工事費全体の15〜25%を占める主要項目です。敷地形状や周囲の環境によって仮設コストが変動するため、同じ30戸規模でも立地条件により100〜200万円の差が生じることがあります。
| 条件 | 想定される追加要因 | 影響額の目安 |
| 敷地が狭く隣接建物と近接 | 外部足場設置困難、防護ネット強化 | +10〜15% |
| 商業地域・歩道に面している | 歩道占用許可・仮囲い設置 | +5〜10% |
| 屋上設備・配管が多い | 仮設通路・養生費増 | +5%前後 |
| 電線・樹木等の障害物 | 架線・枝伐採・一部吊り足場対応 | +10%前後 |
大阪市の中心部では、とくに道路占用許可や歩行者動線確保のための仮設対応が必要となり、郊外エリアよりも仮設費用が高くなる傾向があります。足場条件の確認は現地調査で行う必要があり、見積書には「足場設置面積」「単価」「道路占用費」等の詳細が記載されているかを確認します。
仮設工事が曖昧な見積りは、後のトラブル要因となるため注意が必要です。
③設計監理・保証内容の有無
修繕工事の品質を維持するためには、設計監理の有無が大きな影響を及ぼします。設計監理とは、修繕設計書の作成や施工監理を第三者(設計事務所・建築士)が行う体制を指します。
監理業務を導入する場合、費用は工事金額の8〜12%程度が目安です。
| 項目 | 有無による違い | 主なメリット |
| 設計監理 | 有り | 工事仕様・数量の明確化、手抜き防止、施工品質の均一化 |
| 設計監理 | 無し | 費用は抑制できるが、仕様確認・検査体制が不十分となる可能性 |
また、施工会社による保証制度の内容も見積比較時の重要項目です。
一般的には、
- 外壁塗装:5〜10年保証
- 防水工事:10〜15年保証
- 鉄部塗装:3〜5年保証
上記の期間が標準とされています。
保証範囲(塗膜剥離・漏水対応など)を明示した書面が発行されるかを確認し、保証期間・対応範囲・免責条件の3点を比較することで、単純な金額差を超えた「品質面でのコスト妥当性」を評価できます。
FAQ|6階建・30戸マンションの大規模修繕費用についてよくある質問

大規模修繕は専門性が高く、管理組合様・理事会担当者様からは工事範囲・費用妥当性・発注方式など多岐にわたるご質問をいただきます。ここでは、6階建・30戸規模の修繕を検討する際によく寄せられる疑問にお答えします。
Q.見積り金額に大きな差が出るのはなぜですか?
A.最も大きな要因は「下地補修数量」「足場条件」「設計監理の有無」です。外壁クラックやタイル浮きの数量差は数百万円規模の乖離を生むことがあります。比較の際は、数量根拠(㎡・箇所数)の明記を必ず確認してください。
Q.設計監理方式と施工会社への一括発注ではどちらがよいですか?
A.品質確保を重視する場合は設計監理方式が推奨されます。第三者監理により工事仕様の遵守・手抜き防止につながり、長期的な維持管理に有利です。一方、一括発注はコストを抑えやすいメリットがあります。
Q.工事中の居住者対応はどこまで依頼できますか?
A.工事説明会、掲示物作成、日々の作業予定通知、騒音・粉塵への対応など、施工会社が標準的に行うケースが多いです。事前に「居住者対応マニュアル」の提示を求めると、トラブル防止に役立ちます。
エースが伴走する大規模修繕計画|確実な意思決定につながる総括と次のアクション

築15〜20年を迎える中規模マンションでは、外壁補修・屋上防水・鉄部塗装など複数の劣化が同時に進行し、適切なタイミングでの大規模修繕が資産価値と安全性を守る重要なポイントになります。
今回整理した内容は、6階建・30戸規模のマンションを基準とした費用レンジ、工事項目、工期、そして見積り比較時に確認すべき要素です。とくに補修数量・仮設条件・設計監理の有無は総工費を左右する重要因子であり、管理組合としては「金額だけで選ばない」判断基準が不可欠です。
株式会社エースでは、修繕設計・見積精査・施工管理まで一貫して法人向けの専門体制でサポートしており、第三者視点での仕様確認や工事中の品質管理にも対応可能です。大阪市内の特有条件(敷地制約・占用許可・沿道汚れ対策)を踏まえた実務的なアドバイスも提供しております。大規模修繕を安全かつ確実に進めるためには、初期段階から専門家を交えた計画立案が最も確実です。
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