CX向上が鍵:商業施設改修で来店客単価を伸ばす3施策
商業施設の大規模改修では、来店客の安全確保や建物の維持管理はもちろん重要ですが、それだけでは足りません。今や施設全体のCX(カスタマー・エクスペリエンス)、つまり来店客の体験そのものが、売上や客単価に直結する時代になっています。
特に既存施設のリニューアルでは、テナントの営業を継続させながら工事を進めなければならず「安全性」「快適性」「滞在価値」のすべてを同時に成立させる必要があります。
今回のお役立ち情報では「来店客単価を伸ばすことに直結する改修の3大戦略」として
①施設の体験設計
②営業継続中の対応
③工事後の再始動策
これらを軸に、最新の実践例とともに解説していきます。
▼合わせて読みたい▼
資産価値10年先取り!ビル大規模改修で競争力を守る経営戦略
来店客の「不満」を「満足」に変える改修の基本視点
商業施設の集客・売上を高めるには、単に「きれいになった」だけでは足りません。来店客がどれだけ長く、どれだけ快適に過ごせたか、そして「また来たい」と思えるか。つまり体験価値そのものが求められる時代です。
中でも、照明・動線・空調といった空間要素、視認性の高いサイン、安心感のある清潔な環境といった「快適さ」「分かりやすさ」「安全さ」がそろって初めて、滞在時間が伸び、購買につながります。
来店客の不満を気づかない不満まで含めて洗い出し、それを改修の設計にどう落とし込むかという視点から、3つの重点ポイントを紹介します。
照明・導線・空調で体験価値を再設計する
施設の印象を決定づける要素のひとつが、空間そのものの快適性です。特に照明・導線・空調は、来店客の滞在時間や購買意欲に大きな影響を与えます。
まず照明では、通路・休憩スペース・商品陳列棚での明るさのメリハリが重要です。全体を均一に明るくするのではなく、視線を引くべき場所には強めのスポット、逆に落ち着くエリアは暖色系の間接照明を用いるなど、ゾーニングを意識した設計が求められます。
動線に関しては「なんとなく迷う」「ぐるぐる回る」ことがストレスに繋がるため、回遊しやすく、ゴール(出口・フードコート・化粧室)が明確に見える配置計画が不可欠です。
また空調は「温度がちょうどいい」だけでなく「空気がこもっていない」「ニオイが気にならない」といった心理的快適性も重要。空調機の更新だけでなく、換気ルートや吹き出し口の配置まで含めて最適化することが、体験の質を大きく左右します。
バリアフリー・サイン改善で迷わない施設に
施設内で迷子になる体験は、来店客にとって大きなストレスです。とくに高齢者や子連れ、外国人観光客にとっては「移動しにくい」「読めない」「意味が分からない」だけで購買意欲は一気に下がってしまいます。
そこで重要なのが、バリアフリーと情報の視認性です。バリアフリーでは、段差解消や多目的トイレの増設だけでなく、通路の幅・床の滑りにくさ・エレベーターの配置といった動きやすさの設計が欠かせません。
サインに関しても、日本語表記+ピクトグラム(視覚記号)+英語併記を基本とし、目的地への距離感や方向を直感的に伝える設計が求められます。
また、視覚障害者向けの誘導ブロックや音声案内装置の導入も、公共性の高い施設としての評価につながります。迷わない設計こそが、すべての来店客のストレスを減らし、回遊と購買を促進するポイントです。
安全性と清潔感の強化で滞在時間と単価を伸ばす
「この施設、なんとなく不安」
「ちょっと汚れてる」
そんな印象が一度でも来店客に残れば、その後の購買にはつながりません。実際、滞在時間が短い施設ほど、売上単価が低くなる傾向が強く、逆に「安全・清潔」と感じられる空間は、自然と滞在を引き延ばす効果があります。
安全性の面では、床の滑り止め処理、防災設備の更新、監視カメラの再配置といった基本の見直しが重要です。また「AEDの設置」「非常口の照度強化」なども安心材料として機能します。
清潔感については、単に掃除の頻度を上げるだけでなく、設備そのものの刷新が効果的。例えばトイレの個室化・自動洗浄化、換気強化、タイルの貼り替えなどは、ユーザー満足度の上位に来るポイントです。
こうした目に見える安心を強化することで、施設への信頼感が高まり、来店頻度・単価・滞在時間すべての底上げにつながります。
▼合わせて読みたい▼
テナント離れを防ぐ!オフィスビル修繕で快適性と省エネを両立
工事中でも売上を落とさない!営業継続の工夫
商業施設の改修では「営業を止めずに工事を進める」ことが大前提となります。とはいえ、工事中の騒音・粉塵・動線の混乱といった影響が来店客の体験価値(CX)を損ない、売上に悪影響を与えるリスクは避けられません。
この矛盾を乗り越えるには、単に工事を我慢してもらうのではなく「どうすれば来店客が安心して施設を利用できるか」を起点にした営業継続設計が必要です。
工事と営業の両立を実現するための基本戦略として
①ゾーン分割施工
②情報開示と安心感の演出
③テナント・スタッフとの連携
上記の3点から具体策を解説します。
フェーズ分割施工と仮囲い設計の基本
工事中の営業を成り立たせるには「どこで何をしているか」を明確に分離・管理できる施工計画が必要です。特に重要なのが、施設を複数フェーズに分けて順次施工する「ゾーン分割施工」です。
例えば1階北側→南側→2階へと順番に工事エリアを切り替え、来店導線・テナント営業・工事エリアが重ならないよう調整します。その際、工事音が発生する作業は開店前や閉店後に回すなど、時間帯を分ける工夫も効果的です。
仮囲いの設計にも配慮が必要です。無機質なパネルで覆うのではなく「ここは工事中ですが営業中です」「新しい施設が生まれます」といったポジティブな情報を掲出することで、来店客の安心感を維持します。
また、仮囲いに透明パネルやディスプレイを組み込むことで、閉塞感を和らげるデザイン性も大切です。物理的な仕切りではなく「心理的な納得」を生む仮設計画こそが、営業継続の前提をつくります。
工事情報の開示と「安心の見せ方」戦略
営業を続けるうえで不可欠なのが「工事はしているが、安全である」という印象づくりです。つまり、工事の存在を隠すのではなく、見せ方と伝え方を工夫することで、来店客の不安を払拭するというアプローチが必要になります。
たとえば「○月○日〜○日まではこのエリアで◯◯工事を実施」「◯時〜◯時は音が出ます」など、具体的で正直な情報掲示が基本です。あわせて「安全通路はこちら」「静音作業へのご協力ありがとうございます」といったポジティブなメッセージを添えることで、来店客の協力姿勢を自然に引き出すことができます。
さらに、スタッフによる巡回・声かけ対応、仮囲い前でのフロアマップ案内、誘導スタッフの配置など、人的サポートも重要な要素です。
安全を伝えることは、安心をつくることに直結します。情報開示は、CX(顧客体験)を守るためのコミュニケーション戦略です。
スタッフ・テナントとの連携によるCX維持策
施設側がどれだけ工事計画を工夫しても、実際に来店客と接するのは各テナントや現場スタッフです。彼らが工事中の状況や伝えるべき情報を把握していなければ、来店客の質問に対応できず、クレームや不信感を生む結果になります。
そこで大切なのが「情報の共有」と「対応の一体化」です。工事スケジュール・影響範囲・ルート変更などを記載したスタッフ用工事情報シートを全員に配布し、共通の言葉で説明できる体制を整えます。
また、定例ミーティングや連絡ツール(LINE WORKS、Slackなど)で随時更新を共有し、現場の変化に柔軟に対応できる仕組みが必要です。テナント向けには、販売促進のタイミングやレイアウト変更の相談にも応じることで、店舗ごとの工夫が生まれやすくなります。
来店客の体験は、スタッフの対応力に直結します。工事中でも気持ちよく買い物できたという印象を残せれば、CXは確実に守られるのです。
▼合わせて読みたい▼
テナント稼働率98%を守る工程設計――現場事例で学ぶ最適解
改修後に売上を伸ばす「再始動」プロモーション
工事が完了したからといって、それだけで売上が自然に戻るわけではありません。改修後の商業施設には、物理的な刷新だけでなく「新しくなった価値をどう伝えるか」が問われます。
つまり、リニューアル後の再始動プロモーションが改修成果を最大化するための最終ステップです。ここを怠れば「工事で疲れた」「雰囲気は変わったけど中身は同じ」と感じられ、来店数や単価は思うように伸びません。
施設全体・テナント単位・空間演出という3つの角度から、改修後に売上と来店体験の双方を高めるプロモーション戦略を紹介します。
施設全体で訴求するグランドリニューアル戦略
改修完了のタイミングは「もう一度この施設に来てほしい」とアピールする最大のチャンスです。これを活かすには、単に「工事終わりました」ではなく、再始動の物語として発信する必要があります。
グランドリニューアルオープンと銘打ち、Webサイト・SNS・交通広告・館内POPなどを活用して「何が新しくなったのか」「どう快適になったのか」「何がこれからの目玉なのか」を統一感あるトーンで訴求します。
また、館内の動線に合わせて「新設」「改善」「人気コーナー復活」などのサインを配置し、回遊性を促す工夫も大切です。施設そのものが変化を体験する空間になるよう演出することで、来店動機と購買意欲を同時に刺激できます。
グランドリニューアルは、あくまで施設の第二の開業。そこにストーリーと訴求力があるかが成否を分けます。
テナントと連動したキャンペーン設計
施設全体での告知と並行して、個々のテナントが一体となった販促キャンペーンを展開することで、改修後の売上効果を最大化できます。
たとえば「リニューアル記念〇〇フェア」「最大〇〇%ポイント還元」「リニューアル先行入荷セール」など、期間限定性と回数性を持たせた施策が効果的です。
さらに「館内3店舗以上利用でプレゼント」「回遊スタンプラリー」「テナント推薦商品で館内ランキング」など、複数店舗を横断して楽しめるコンテンツを導入することで、購買単価や滞在時間の底上げも狙えます。
重要なのは、施設側とテナント側で勝ち筋を共有すること。キャンペーンを一方的に指示するのではなく、テナントと一緒に設計し、成果をテナント自身の売上実感に変えていくプロセスが、長期的な関係構築にもつながります。
工事明けの印象を最大化する空間演出
工事が終わったばかりの施設は、ピカピカである一方「何か物足りない」「少し無機質」と感じられることがあります。だからこそ、最初の印象付けが極めて重要になります。
館内のファサードや吹き抜けスペース、エントランスなどに、季節感や地域性を感じさせる装飾やポップアップ演出を施すことで「変わっただけじゃない、なんかいい」が生まれます。
また、改修前後の比較ビジュアル(Before→After)や工事中の裏側を伝える展示、来店者の声を紹介するスペースを設ければ、施設と来店客の間に関係性が生まれます。イベントやライブなどの非日常演出を仕込むのも効果的です。
ハードの刷新にソフトの活気を重ねることで、商業施設は単なる買い物空間から、体験空間へと進化します。
来店体験の設計が、改修成果を左右する
商業施設の改修は、単なるリニューアルではなく「来店客がどう感じ、どう動き、どう購買するか」を再設計する絶好の機会です。施設の安全性や設備の刷新だけでは、売上や客単価の向上には直結しません。
重要なのは、来店者がまた来たいと思える体験を、改修によってどう生み出せるか。そして、その価値を工事中も失わず、工事後には最大化して伝えることです。
改修は終わりではなく始まり。体験設計こそが、投資に対する成果を決定づける真のエンジンになります。CX=顧客体験の質を軸にした施設づくりが、これからの商業施設改修のスタンダードです。
▼合わせて読みたい▼
共益費最適化で差別化!テナントビル改修の最新トレンド
CX向上による商業施設改修の最適解は株式会社エースへのご相談が鍵
商業施設の大規模改修においては、従来の維持管理や安全性確保のみならず、来店客の体験価値(CX)を戦略的に設計することが、売上・客単価の向上に直結します。照明や動線、空調設計、バリアフリー化、情報サインの刷新、安全・清潔感の強化など、あらゆる観点から「また来たい」と思わせる空間づくりが不可欠です。
加えて、営業継続を前提としたゾーン分割施工や工事中の情報開示、テナント・スタッフとの連携によるCX維持も、顧客離れを防ぎ、収益機会の損失を最小限に抑える要諦となります。改修後には、グランドリニューアル戦略やテナント連動キャンペーン、空間演出を通じて、新たな顧客体験を積極的に発信することが求められます。
株式会社エースは、こうした一連の改修プロセスを、計画段階から施工、再始動プロモーションまで一貫してご支援します。
施設改修によるCX向上・売上増をお考えの際は、ぜひ株式会社エースのお問い合わせフォーム、メール、またはお電話でご相談ください。豊富な実績と専門性で、貴社施設の価値向上を全力でサポートいたします。