法改正チェックリスト:建築基準法×ビル改修5大ポイント

ビルの改修工事に取りかかる際、「建築基準法は関係ないだろう」と思っていませんか?

実は、2025年の法改正を境に、大規模修繕や模様替えであっても確認申請が必要となるケースが増えています。構造に手を入れないから大丈夫、と判断するのは危険です。用途変更、避難経路の変更、省エネ基準適合義務など、思わぬところで法令違反に該当してしまう可能性があります。

「知らなかった」では済まされないのが法令遵守の世界。改修工事が始まってから慌てるのではなく、計画段階から最新の法改正に沿ったチェックをしておくことが、コストと信用を守る最短ルートです。

今回のお役立ち情報では「2025年の建築基準法改正を踏まえ、ビル改修で押さえておきたい5大チェックポイント」をわかりやすく解説します。

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2025年建築基準法改正の重要ポイントを整理

建築基準法は、建物の設計や施工に関するルールを定めるだけでなく、用途変更や大規模改修にも影響を及ぼす生きた法律です。特に2025年施行の法改正では、従来「確認申請不要」とされてきた工事の一部が、確認申請対象になる可能性が明記されました。

これにより、従来の感覚で工事を進めた結果「着工後に確認申請が必要だった」と行政指導を受ける事例も懸念されます。改正で何がどう変わるのか、特にビルの改修工事に関連が深いポイントを3つに絞って見ていきましょう。

改修でも確認申請が必要なケースが拡大

2025年の改正で最も注目すべきなのは、「大規模の修繕・模様替え」に関する確認申請義務の範囲が広がったことです。これまでは、建築確認が不要な軽微な改修(内装の変更や設備更新など)であれば申請なしで進められましたが、今後は構造・避難・防火に関わる部分に変更を加える場合、確認申請が必要になる可能性が高まります。

例えば、耐震補強を行う場合や、外壁の下地まで解体して再構築する場合、階段やエレベーターの位置を変更するような工事は、「大規模の修繕・模様替え」に該当し、確認申請の対象になります。また、既存不適格建築物(現行法に適合していないが合法的に存在する建物)については、改修によって違反建築物と見なされるリスクもあります。

つまり、確認申請が不要だった時代の経験則が、今後は通用しなくなる可能性があるということ。建築士による事前の設計検討と、自治体との協議がより重要なプロセスとなります。

避難経路・バリアフリー規定の強化

今回の改正では、建築基準法とバリアフリー法の連携が強化され、「不特定多数が利用する建物」では避難経路の確保とバリアフリー対応の義務が拡大しました。たとえば、共用廊下の幅やスロープの勾配、手すりの設置などが細かく規定され、エレベーターの増設や出入口のバリアフリー化を伴う場合は、改修であっても届出が求められるようになっています。

さらに、一定規模を超えるビルや複合用途建物では、これまで対象外だった部分にもバリアフリー対応の設計変更が求められるケースが増えています。特に、テナントビルで用途変更、具体例を挙げるのであれば物販から医療に変更するような工事では、避難経路の確保や自動ドアの設置、段差解消の計画が求められることも。

これらの要件は、設計図書上では見落とされがちなため、事前に自治体と協議し、建築確認申請に含める必要があります。「内装を少しいじるだけ」のつもりが、実は大規模な適合義務に抵触するリスクもあるのです。

省エネ法との連携による断熱基準の強化

建築基準法だけでなく、「建築物省エネ法(省エネ法)」との関係も密接になっています。2025年度からは、一定規模以上の建物に対して省エネ基準への適合義務が強化され、改修時であっても断熱性能の確保やエネルギー消費量の試算提出が求められるケースが増加します。

これにより、外壁の断熱改修、窓の複層ガラス化、高効率設備(空調・照明・給湯器など)の導入が補助金の対象となるだけでなく、法的にもやらなければいけない改修になる可能性があるということです。

とくに、テナントビルで複数階にまたがる改修を行う際、改修後の建物全体が省エネ基準を満たしているかどうかがチェックされるようになり、設計者と工事会社の連携がより重要になります。

法令は見えないコストを生み出しますが、ここに補助金や長期優良建築物認定を絡めることで、結果としてROIを高める戦略にもなり得ます。

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ビル改修で見落とされがちな法的盲点とは?

改修工事では「構造に手を加えなければ法的な届出は不要」と誤解されがちですが、それはすでに通用しない時代に突入しています。建築基準法の改正や関連法令の見直しにより、用途変更や避難経路の変更、さらには設備機器の大型化など、さまざまな要素が「申請対象」に該当するようになってきています。

特に、既存不適格建築物においては、建築当時は合法であっても、現在の基準では適合していない部分が多々あります。その状態で改修を行うと、意図せず違反建築と見なされる恐れもあるため、注意が必要です。

実務で見落とされがちな3つの盲点を覚えておきましょう。どれも「知らなかった」では済まされない、リスクをはらんだ法的チェックポイントです。

用途変更・テナント構成変更と建築用途区分

ビル改修においてよく見落とされるのが、テナントの入れ替えや用途変更にともなう「用途区分」の問題です。たとえば、1階の飲食店を診療所に変更する、2階の事務所を物販店舗にするなど、一見軽微に見える変更でも、建築基準法上の用途区分が変わることで、建築確認申請や特定用途建築物の適合義務が発生することがあります。

さらに、複数のテナントが入居しているビルでは、建物全体として「主用途」が何であるかが法的判断の基準となります。全体の過半数の床面積を占める用途が主用途とされるため、1テナントの変更がビル全体の法的位置づけに影響することも。

用途区分の変更は、避難経路の基準、バリアフリー基準、消防法上の区画要件などにも関わってくるため、内装工事のみを予定していた場合でも、改修前の確認は必須です。計画段階から建築士や行政の建築指導課に相談し、「これは届出が必要か?」を明確にしておくことがリスク回避につながります。

「大規模の修繕・模様替え」の法的定義と判断基準

建築基準法における「大規模の修繕」「大規模の模様替え」という言葉は、あいまいに捉えられがちですが、実は明確な判断基準があります。たとえば、主要構造部(柱・梁・壁・床など)に影響を与える工事で、一定面積以上(通常は延床面積の1/2以上)を対象とする場合には、大規模とみなされ、建築確認申請が必要となります。

また、内装の模様替えであっても、防火区画や耐火構造に関係する壁や天井に手を加える場合は「模様替え」に該当します。これは単にクロスを貼り替える程度の内容とは大きく異なり、区画の改変や仕上材の変更が、建築基準法上の制限にかかる可能性があるということです。

法的な判断の際は、どの部分にどんな工事を行うかが鍵になります。建築士の判断でもグレーな場合は、必ず自治体へ事前相談を行い、対象範囲を確認しておくことが安全です。

既存不適格建築物の扱いと改修の限界

「既存不適格建築物」とは、建築当時の法規には適合していたものの、法改正などによって現在の基準には適合していない建物を指します。これは違法建築とは異なり、法的には認められているものの、増改築・用途変更・大規模修繕などを行う場合には、現行基準への適合義務が発生する可能性があります。

たとえば、容積率や建ぺい率をオーバーしている建物では、外壁の増設や階段の新設によって適合義務違反とされるケースもあります。また、非常用照明や防火設備の未設置といった状況が見つかれば、指導が入り、結果的に余計な工事や費用がかかる事態にもなりかねません。

既存不適格は触れない限り黙認される性質を持っていますが、一度工事が入ることで行政のチェックが入り、改修範囲外まで是正を求められるリスクがあるということです。法務と設計の両視点から、改修内容の整理と工事範囲の戦略的な切り分けが重要です。

実務に活かせる!改修工事前の法対応チェックリスト

建築基準法や関連制度の改正によって、改修工事の前に確認・届出が必要な項目が年々増えています。とはいえ、法文をすべて読み込むのは現場担当者にとって現実的ではありません。そこで重要になるのが、「チェックリスト形式で何を確認すべきか」を整理することです。
とくに既存ビルの改修では、過去に確認済証が見つからない、図面が古くて現況と合わない、用途変更を見落としていた──といったトラブルが後を絶ちません。

実際の現場で役立つ「法対応の見落とし防止」のための3つのチェック項目を挙げてみましょう。事前に押さえることで、不要な工期遅延・追加申請・是正工事を未然に防ぐことができます。

工事前に自治体へ確認すべき項目一覧

改修工事を進めるにあたり、自治体(建築指導課・都市計画課など)との事前相談は「やるべきだが後回しにされがち」な作業のひとつです。しかし、実務ではこの段階を飛ばすことで確認申請が遅れたり、あとから構造変更に関わる指摘が入ったりと、結果的に大きなトラブルを生んでいます。
チェックすべき項目は以下のとおりです。

  • 対象建物の「用途地域」および「建ぺい率・容積率」の現状確認
  • 既存建物の「確認済証」「検査済証」が存在するか
  • 今回の工事が「確認申請対象」に該当するか(構造・避難・防火・用途)
  • 避難経路や出入口の変更に伴う指導項目の有無
  • 建築物省エネ法の対象範囲と必要な届出の種類(届出義務 or 任意)

これらは自治体の窓口でヒアリング可能なほか、電話・メール・図面持参での相談も可能です。相談時には「現況図」「改修計画図」「用途変更の有無」が必須なので、工事会社や設計者と連携して提出資料を整えておくとスムーズです。

施工計画書と設計図書に必要な記載要素

確認申請が必要な工事を進める場合、施工計画書や設計図書の整備が法的にも実務上も非常に重要になります。とくに改修工事では、既存建物と改修後の状態を「比較可能な形式」で図面に表現することが求められます。

設計図書には最低限、以下の項目を含める必要があります。

  • 改修範囲(既存図と変更図の比較)
  • 主要構造部に対する影響の有無と内容
  • 避難経路・階段・手すり・出入口幅などのバリアフリー確認
  • 防火区画や耐火構造の変更箇所と処理方法
  • 使用建材の告示番号、断熱性能、遮音性能(必要に応じて)

また、施工計画書では、工事期間・仮設計画・安全管理・搬入経路などを明記します。これらの資料が未整備、あるいは曖昧な記載になっている場合、確認審査で差戻しされる確率が高まります。工事着手までのスケジュールに余裕をもたせ、図書作成→レビュー→提出という工程を事前に確保しておくべきです。

トラブルを防ぐ法令先回りの動き方

建築関係のトラブルの多くは、「施主が法的義務を把握していなかった」ことが発端です。特に改修工事では、「設計士や施工業者に任せておけば大丈夫」という思い込みが危険を招きます。

実際には、設計者の判断だけでは解釈が分かれる場面も多く、自治体判断に委ねられるケースが多数存在します。
トラブルを避けるには、次の先回り行動が効果的です。

  • 工事対象となる建物の「法的ポジション」(既存不適格か否か)を初期に確認
  • 計画変更や仕様変更時には、都度建築士だけでなく行政側にも相談
  • 確認申請が不要と判断された場合でも、その理由を文書で残しておく(行政ヒアリングメモなど)
  • 外注業者に任せきりにせず、自社で法令の最低限の理解を持つ

こうした動きを事前に取っておくだけで、現場・書類・行政の三者連携がスムーズになり、トラブルの芽を摘むことができます。改修プロジェクトでは「法対応は最後ではなく最初に」行うのが鉄則です。

建築法令を正しく理解することが資産を守る第一歩

ビル改修工事において、建築基準法や関連法令への対応は後から考えるべきものではありません。改修範囲や用途変更の有無、構造や避難経路への影響など、たとえ「一部の内装」だとしても、法的な影響範囲は想像以上に広がる可能性があります。

改正された制度に無自覚なまま工事を進めれば、確認申請のやり直し、是正命令、最悪の場合は工事中断という事態にもつながりかねません。

だからこそ、着工前の法チェックと関係者との情報共有が、工期の安定、コスト抑制、そして資産価値維持の3本柱につながります。建築法令を読むことは難しくとも、読もうとする姿勢が、将来のトラブルを防ぎ、建物の信頼を守る第一歩になります。

2025年建築基準法改正に対応したビル改修の法令チェックポイント|株式会社エースへご相談ください

2025年の建築基準法改正により、大規模修繕や模様替えでも確認申請が必要となるケースが増えています。用途変更や避難経路の変更、省エネ基準適合義務の強化など、改修工事における法令遵守はこれまで以上に厳格になりました。

特に既存不適格建築物の改修では、意図せず違反建築とみなされるリスクが高まるため、計画段階から建築士や行政との綿密な協議が不可欠です。

ビル改修で押さえるべき5大ポイント

①確認申請義務の拡大

②避難経路・バリアフリー規定の強化

③省エネ法との連携による断熱基準の強化

④用途変更に伴う用途区分の見直し

⑤既存不適格建築物の取り扱い

これらは見落としがちな法的盲点となり、施工計画や設計図書への反映、自治体への事前相談が重要となります。

株式会社エースでは、最新の法改正を踏まえた適切な確認申請対応や設計支援、法的リスク回避のためのチェックリスト作成などをトータルサポートしております。お問い合わせフォームやメール、電話でのご相談、またショールームでの対面説明も承っておりますので、安心してビル改修工事を進めるためにぜひご連絡ください。株式会社エースが法令遵守の最善策をご提案いたします。

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