大規模修繕で活用可能な2025年補助金制度の整理―大阪府の運用と国制度の併用

2025年時点では、大規模修繕・外壁改修・防水更新といった工事においても、省エネ性能向上・耐震性改善・環境負荷低減を目的とした補助制度が多数整備されています。
とくに大阪府では、府独自の住宅・建築物支援に加え、国が推進する省エネ関連補助金との併用が可能な場合があり、適用条件を理解したうえで計画段階から組み込むことが求められます。
今回のお役立ち情報では「(1)大阪府・市で利用可能な2025年度補助金制度、(2)国の主要制度との関係、(3)併用・申請時の実務上の留意点」を整理します。
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大阪府で利用可能な2025年補助金制度

大阪府では、建築物の省エネ化・耐震化を推進するため、複数の補助金制度を運用しています。2025年度は、エネルギーコスト高騰への対応を目的に、省エネ性能向上を含む改修事業に対して補助率が拡充されており、大規模修繕時にこれらを併用することで費用負担の軽減が期待できます。
以下では、府および大阪市で実施されている代表的な制度を整理します。
大阪府住宅・建築物省エネ改修支援事業
本事業は、府内の建築物を対象とし、断熱・遮熱などの省エネ性能向上工事に対して補助を行う制度です。マンション共用部においても、屋上防水層の高反射塗装や外壁断熱改修が補助対象となる場合があります。
| 項目 | 内容 |
| 対象工事 | 外壁・屋上の断熱改修、窓・建具の高断熱化、共用部照明のLED化など |
| 補助率 | 工事費の1/3(上限1,000万円) |
| 対象者 | 管理組合、建物所有者、法人 |
| 申請時期 | 年度内2期制(上期:5月〜、下期:10月〜) |
| 必要書類 | 施工見積書、仕様書、エネルギー削減効果試算書など |
申請にあたっては、省エネ効果の定量的根拠(一次エネルギー消費量削減率など)を示すことが求められます。設計事務所や設備コンサルによる技術資料添付が必須であり、早期準備が重要です。
大阪府耐震改修促進事業(共同住宅対象)
本制度は、旧耐震基準で建設された共同住宅を対象に、耐震診断および改修工事費の一部を補助するものです。大規模修繕に合わせて耐震補強を実施する場合、同制度を活用することで補助対象となるケースがあります。
| 項目 | 内容 |
| 対象工事 | RC造・S造の耐震補強工事、外壁補強、基礎改修など |
| 補助率 | 工事費の1/3(上限2,000万円) |
| 対象者 | 管理組合または建物所有者(法人含む) |
| 対象条件 | 建築確認日が1981年5月31日以前の建物 |
| 特記事項 | 設計費・構造計算費も一部補助対象 |
工事単体ではなく「耐震診断→補強設計→改修施工」という一連の流れで補助対象となります。補助決定までに構造判定委員会等の審査を経る必要があり、計画段階でスケジュールを確保することが重要です。
大阪市独自制度(マンション環境性能改善補助等)
大阪市独自の支援として「マンション環境性能改善補助」および「住宅ストック総合支援事業(市民協働型)」が継続運用されています。
これらは、とくに省エネ・防災・バリアフリー改修を複合的に行うマンションを対象としており、大規模修繕と同時に屋上緑化や省エネ設備改修を行う際に併用が可能です。
| 制度名 | 補助率 | 対象工事 | 主な条件 |
| マンション環境性能改善補助 | 工事費の1/4(上限500万円) | LED照明・断熱材・太陽光発電設置等 | 管理組合が申請主体 |
| 市民協働型ストック支援 | 工事費の1/3(上限1,000万円) | 防災設備・避難導線改善など | 住民合意形成計画の提出が必要 |
大阪市では、省エネ・防災の「複合改修」を推奨しており、複数の制度を組み合わせた改修計画を提出することで、加点対象になる場合があります。
国の主要補助制度と大規模修繕での活用

大阪府制度と併せて検討すべきなのが、国が運用する住宅・建築物向けの補助制度です。国の制度は、省エネ・防災・長寿命化といった政策目的に沿って設計されており、共用部の断熱改修や防水更新など、大規模修繕に該当する工事の一部も対象となります。
とくに2025年度は、省エネ化推進を目的とした新規支援枠の拡充が予定されており「既存建築物の性能向上」をキーワードにした複合的な支援制度が整備されています。
ここでは、大規模修繕に活用可能な国の代表的3制度を整理します。
住宅省エネ2025キャンペーン(外壁断熱・窓改修)
国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による、住宅分野の包括的補助制度です。戸建住宅向けの印象が強いものの、分譲マンションの共用部における断熱改修や窓交換も対象となっています。
| 項目 | 内容 |
| 対象工事 | 外壁断熱改修、屋上断熱、防水層断熱材更新、窓・建具の高断熱化 |
| 補助率 | 工事費の1/3(上限2,000万円/棟) |
| 対象者 | 管理組合・所有者法人・賃貸事業者 |
| 併用可否 | 大阪府省エネ改修補助との併用可(重複不可) |
| 申請方式 | 登録施工業者または設計事務所によるオンライン申請 |
外壁塗装に断熱塗料や高反射塗料を採用する場合も、省エネ効果が定量的に証明できれば補助対象に含まれます。申請には、工事仕様書および一次エネルギー消費量算定書(BELS評価等)が必要です。
技術的審査を要するため、設計段階での評価資料整備が前提となります。
既存建築物省エネ化推進事業(法人・管理組合対象)
環境省が主管する制度で、中規模以上の既存建築物の改修を支援することを目的としています。外壁・屋上・照明・空調など複数設備を包括して改修するケースが対象となり、大規模修繕と同時に省エネ化を実現する計画に適しています。
| 項目 | 内容 |
| 対象工事 | 建築物全体の省エネ改修(外壁断熱、屋上遮熱、防水、照明LED化、空調更新など) |
| 補助率 | 工事費の1/2(上限5億円) |
| 対象者 | 法人、管理組合、自治体、公益法人など |
| 採択方式 | 公募型(年2回程度、審査あり) |
| 要件 | エネルギー削減率15%以上(BEI値または一次エネルギー評価による) |
特徴として、建物全体のエネルギー削減率を評価する点が挙げられます。単一の修繕工事よりも、外壁・設備・照明を統合した改修計画が有利です。
また、省エネ診断(CASBEE、ZEBReady等)の結果を添付することで、採択率が向上します。大阪市では、ゼネコン系改修部門が同制度を利用し、外壁断熱と屋上遮熱改修を同時実施した例もあります。
管理組合単独では申請が難しいため、設計監理者または法人代理申請が現実的です。
防災・減災対策支援事業(屋上防水・外壁補強等)
国土交通省が推進する「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に基づく支援制度です。マンション共用部の防水・外壁補強・避難導線整備など、災害時の安全性向上を目的とした工事が対象です。
| 項目 | 内容 |
| 対象工事 | 屋上防水層の更新、外壁補強、避難経路の改修、非常用電源設備設置 |
| 補助率 | 工事費の1/2(上限3,000万円) |
| 対象者 | 管理組合、自治体、福祉法人など |
| 要件 | 耐震基準適合または耐震補強計画策定済みであること |
| 特記事項 | 省エネ改修との併用申請可(防災枠として加点) |
本制度は「省エネ+防災」を複合的に評価する仕組みを採用しており、耐震補強および防水改修を同時実施する大規模修繕において活用が見込まれます。また、申請主体が管理組合の場合は、設計監理者による技術的支援が必須です。
補助制度の併用・申請実務の整理

大阪府および国の補助制度は、いずれも目的ごとに設計されており、大規模修繕で複数制度を組み合わせて活用する場合には、重複支給の回避・申請時期の整合・書類様式の統一が重要なポイントとなります。
ここでは、制度の併用ルール、申請手続の流れ、関係者の役割分担を整理します。
制度併用の可否と注意点
2025年度時点では、大阪府の省エネ改修補助と国の住宅省エネキャンペーン、または既存建築物省エネ化推進事業を同一工事内で併用することは不可です。ただし、以下のように工事内容を明確に区分すれば、同一建物での並行活用は可能です。
| 工事区分 | 適用制度 | 補助率 | 併用可否 | 備考 |
| 外壁断熱・塗装 | 住宅省エネ2025キャンペーン | 1/3 | ○ | 省エネ性能評価が必要 |
| 屋上遮熱・防水改修 | 大阪府省エネ改修支援 | 1/3 | ○ | 効果測定書添付が条件 |
| 外壁補強・耐震補修 | 大阪府耐震改修促進事業 | 1/3 | ○ | 他制度と重複不可 |
| 防災設備・避難導線整備 | 防災・減災対策支援事業 | 1/2 | ○ | 技術審査書類を別提出 |
重要なのは「補助金の対象経費を明確に分離すること」と「事業ごとに請負契約・見積書を分割すること」です。複数制度を活用する場合、設計監理者が工事項目別に積算を分離し、
交付申請書類にも同様の区分を明示する必要があります。
この整理を怠ると、審査段階で「重複支援」と判定されるリスクがあります。
申請スケジュールと必要書類
補助金申請のタイミングは、制度ごとに異なりますが、共通して工事着工前の事前申請が原則です。大規模修繕においては、設計完了後すぐに申請手続きを開始するスケジュール設計が求められます。
| フェーズ | 時期の目安 | 主な作業 | 関与主体 |
| ①計画・設計段階 | 着工の6〜9か月前 | 補助対象工事項目の整理、制度選定、事前相談 | 設計監理者・管理組合 |
| ②申請準備段階 | 着工の3〜6か月前 | 見積書・仕様書・効果試算書・納税証明書の整備 | 設計監理者・施工業者 |
| ③申請提出 | 着工の1〜3か月前 | 申請書・添付資料の提出、補助金交付決定待ち | 管理組合(申請者) |
| ④着工・実績報告 | 工事完了後 | 完了報告書・検査写真・支払い証明書を提出 | 施工業者・設計監理者 |
必要書類の基本構成は以下のとおりです。
- 交付申請書(様式第1号等)
- 工事契約書および見積書(工事項目ごとに分離)
- 設計図書および仕様書
- 省エネ・耐震・防災効果の試算書(BEI値・エネルギー削減率等)
- 納税証明書、登記事項証明書
- 管理組合議事録(修繕実施および補助金申請承認決議)
審査期間は2〜3か月を要するため、実際の着工時期から逆算した申請スケジュールを策定することが推奨されます。
設計監理者・施工者の役割分担
補助金の申請および実施管理においては、関係者間の役割分担を明確にすることが不可欠です。とくに管理組合が申請主体となる場合、専門技術者の支援体制を構築しておく必要があります。
| 区分 | 主な役割 | 備考 |
| 管理組合(申請主体) | 補助金申請者として申請書の提出、議決手続の実施 | 補助金交付決定通知の受領者 |
| 設計監理者 | 対象工事の特定、積算区分の整理、技術資料作成、効果試算 | 技術的書類の作成責任を負う |
| 施工業者 | 工事内容の実施、写真記録・実績報告書の作成 | 補助対象経費の支出証明を提出 |
| 行政・補助事務局 | 書類審査、現地検査、交付決定・支払管理 | 年度予算枠に基づく受付制 |
補助金の採択後、工事内容や金額を変更する場合には「変更承認申請」が必要であり、これを怠ると補助金の返還対象となる場合があります。
したがって、工事期間中も設計監理者が行政との窓口を担い、進捗・変更内容を随時共有する体制を整えておくことが望ましいです。
FAQ|大規模修繕で活用可能な2025年補助金制度についてよくある質問

大規模修繕に補助金を組み込む際は、制度ごとの目的・対象範囲・申請スケジュールが異なるため、管理組合・法人オーナーから多くの質問をいただきます。ここでは実務で特に問い合わせの多いポイントを整理して回答します。
Q.大阪府の省エネ補助金と国の補助金は同じ工事で併用できますか?
原則として同一工事費への二重補助は認められません。ただし工事項目を区分し、見積書・契約書を明確に分離することで、同一建物内での並行申請は可能です。設計監理者による積算区分が必須です。
Q.管理組合単独でも国の「既存建築物省エネ化推進事業」は申請できますか?
制度上は申請可能ですが、エネルギー削減率の算定や技術資料作成に高度な専門性が必要なため、実務では設計事務所・コンサル・法人代理申請の支援を受けるケースが一般的です。
Q.補助金申請に必要な資料はどの段階で用意すべきですか?
省エネ・耐震・防災の効果試算は設計段階でなければ作成できないため、着工の6〜9か月前から準備を開始するのが適切です。工事完了後にまとめて書類を整えることはできません。
大規模修繕の補助金活用で失敗しないための最終確認はエースにご相談ください

大規模修繕に補助金制度を組み込む最大のメリットは、工事の質を落とすことなく将来の修繕コストを圧縮できる点にあります。
しかし、大阪府・大阪市・国の制度はいずれも目的が異なり、書類構成・申請時期・効果試算の要件が細かく定められているため、管理組合や法人オーナーにとって判断が難しい場面も少なくありません。
とくに制度併用を検討する際は、工事項目の分離、積算内訳の明確化、技術資料の整合性といった実務上の整理が不可欠です。また、申請スケジュールは「工事着工前」が大前提であり、補助金交付決定前に着工すると対象外となるため、計画段階で専門家を交えて進めることが重要です。
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