BCPから逆算する建物点検の年間計画|停電・水害に強い“大規模修繕”

企業のBCPに沿った点検・改修計画の作り方を知りたい

地震・豪雨・停電・感染症。企業のBCP(事業継続計画)は、これらの想定外に備えるだけではなく「平常時に設備を動かせる状態を維持すること」から始まります。

実際、災害時に建物が使用不能となるケースの多くは、日常点検や改修の遅れが原因です。非常電源が作動しない、防火設備が閉じない、換気装置が動かない──いずれも平常時の管理で防げたトラブルです。

BCPの本質は危機対応ではなく継続性の設計です。建物の点検・改修計画をBCPと連動させることで、企業活動そのものの止まりにくさを高められます。

今回のお役立ち情報では「企業のBCPに沿った建物点検・改修の年間計画の作り方」について解説します。

 

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BCPと建物点検・改修計画の関係を理解する

BCPと建物点検・改修計画の関係を理解する

企業のBCPは、経営資源(人・物・情報・設備)を緊急時にも維持するための包括的な方針です。その中で建物・設備は、人命安全と事業継続の土台を支える要素に位置づけられます。

つまり「防災」「維持管理」「復旧」の3局面すべてに、建物点検・改修計画が直結しているのです。

BCPにおける建物機能の位置づけ

BCPの目的は「止めない経営」です。そのためには、災害発生時に建物の基本機能(安全・電源・通信・換気・避難)が維持されている必要があります。

下記のように、建物機能はBCPの第一層にあたります。

 

区分 内容 建物関連の対応策
人命安全 避難・防火・耐震 防火設備検査・避難経路確保・耐震診断
事業継続 電源・通信・設備稼働 非常電源・UPS・給排水・空調点検
早期復旧 修繕・部品調達 修繕計画・代替設備・在庫管理

 

このように、BCPで定める「復旧体制」の基盤には、日常点検による設備の稼働性確認が欠かせません。BCPを運用する総務・施設部門は、計画書作成だけでなく、年次点検と改修履歴をBCPの裏付け資料に組み込むことが求められます。

BCP上の建物リスクと点検・改修の対応軸

BCPにおけるリスクマップを作成する際、建物・設備リスクを次のように分類しておくと、点検計画と直接紐づけやすくなります。

 

リスク区分 想定事象 必要な点検・改修項目
災害リスク 地震・台風・洪水 耐震診断、外壁・屋上防水・排水能力点検
停電リスク 停電・瞬低・非常電源不作動 受変電設備・非常発電機・UPS試験
火災リスク 機械室・配線・油煙発火 消防設備・防火戸・排煙設備点検
感染リスク 換気不足・給排水汚染 換気量測定、空調フィルター管理、給水衛生点検
老朽化リスク 部品寿命・漏水 劣化診断・定期改修・更新計画策定

 

BCPは「発生時対応」よりも「発生前準備」こそが成果を左右します。点検・改修を年次スケジュール化しておけば、各リスクへの対応が明確になり、社内監査や保険審査にも活用できます。

BCP視点で点検・改修を年次管理する理由

災害時に動かない設備は、設計上の不備よりも点検漏れ・是正遅れによって生じます。平常時から点検結果を整理し、BCP担当部署と共有することで

 

  • 「どの設備が重要度Aか」
  • 「いつまでに更新が必要か」
  • 「バックアップ設備は存在するか」

 

これらを一覧で可視化できます。

 

また、年度ごとに「法定点検+BCP補完点検」として計画を立てると、

 

  • 報告書のフォーマット統一
  • 年度予算との整合
  • BCPレビュー時の証跡提出

これらが一度に行えるようになります。

 

BCP対応の建物管理とは、緊急時に備える管理ではなく、平常時に整える管理です。点検と改修を年間スケジュールとしてBCPに組み込むことが、リスクマネジメントの第一歩となります。

BCPに対応した年間点検・改修計画テンプレート

BCPに対応した年間点検・改修計画テンプレート

BCPに沿った建物管理では、「平常時に何を、どの順序で、どの部署が実施するか」を明確にしておくことが重要です。

年度ごとに点検・改修・訓練・評価を整理した年間スケジュール表を作成することで

・担当者交代時の引き継ぎ
・法定点検漏れの防止
・BCPレビュー(見直し)時の証跡提出

この3点を確実に担保できます。

 

以下に、実際の法人施設・オフィスビル管理で使用できるBCP連動型の年間点検計画テンプレートを示します。

年間点検・改修スケジュール例(テンプレート)

 

主な実施項目 点検・改修内容 対応するBCPリスク 担当部門 記録様式
4月 建築設備定期検査(法第12条) 給排水・換気・排煙・非常照明点検 災害・老朽化 設備管理課 定期報告書様式(建築設備)
5月 消防設備点検 火災報知器・スプリンクラー・避難誘導灯 火災 安全衛生課 消防法点検報告書
6月 外壁・屋上・排水設備点検 外壁タイル浮き・防水劣化・排水詰まり 災害・漏水 建築管理課 外壁点検表/写真台帳
7月 非常用発電機・UPS試験 負荷試験・起動確認・自動切替検証 停電・情報喪失 設備管理課 発電機試験報告書
8月 換気・空調・給水衛生点検 換気量測定・水質検査・配管劣化確認 感染・快適性 環境管理課 空調衛生管理記録
9月 防火設備検査 防火戸・シャッター・防煙壁作動試験 火災・避難 安全衛生課 防火設備報告書
10月 BCP訓練・避難経路確認 模擬停電・避難誘導・情報伝達訓練 総合防災 総務部 BCP訓練記録/反省報
11月 給水・貯水槽清掃・衛生確認 槽内洗浄・水質測定 感染 設備管理課 清掃記録/検査成績表
12月 修繕計画検討会 年度点検結果から改修優先度設定 維持管理 管理本部 修繕候補一覧/見積比較表
1月 改修実施・契約手続き 屋上防水・設備更新・塗装等 継続管理 経理・建築課 工事契約書・報告書
2月 次年度予算策定・補助金調査 補助金活用・省エネ改修計画 財務リスク 経営企画室 補助金調査票/予算案
3月 年間報告書作成・BCPレビュー 全点検結果・是正報告・課題整理 継続改善 総務部 年間点検総括報告書

スケジュール設計のポイント

  1. 法定点検+BCP補完項目をセット化
    ・建築基準法・消防法・労安法など法定項目を基礎に、
    「非常電源・通信・換気・防水」などBCP視点の補完点検を追加。
    ・年間計画を一枚で可視化すると、BCP整備=法令遵守の構造を社内で説明しやすくなる。

 

  1. BCPリスク分類を明記する
    ・各項目に「火災」「停電」「感染」「災害」などのBCPリスクを明記しておくと、
    社内報告書や監査資料としてそのまま転用可能。
    ・リスク別KPI(例:点検完了率、是正完了率)を設定すると改善管理が容易。

 

  1. 改修決定・稟議プロセスを年度内に組み込む
    ・点検→評価→修繕決定→契約までを「年度内ループ」に収める。
    ・これにより予算繰越や未執行リスクを防止できる。

 

  1. 記録の一元管理とデジタル化
    ・Excelまたはクラウドで「年度別点検台帳」を作成。
    ・各報告書(PDF/写真)をリンク化し、BCP文書の付録として参照可能にする。

年次レビューと改善サイクルの作り方

BCP対応の建物管理は、やりっぱなしでは意味がありません。
年1回の「総括レビュー」を設定し、以下の観点で改善点を洗い出します。

 

  • 災害・停電・感染事案の発生有無と再発防止策
  • 設備トラブル件数の推移
  • 点検項目の実施率・是正率
  • 改修効果の検証(漏水再発・光熱費変動など)
  • 来年度への改善提案(予算要求・設備更新)

 

このレビュー内容をBCP更新版の添付資料とすることで、ISO22301(事業継続マネジメント)や社内監査対応も容易になります。

テンプレート運用による効果

  • 年間点検がBCP報告書の一部として扱える
  • 設備更新の優先順位が定量化され、稟議が通りやすくなる
  • 維持管理と防災・安全が一体化し、経営リスクの説明が簡潔になる
  • 担当者変更があっても「いつ・誰が・何を行うか」が明確

BCP×建物保全で企業価値を高める実務ポイント

BCP×建物保全で企業価値を高める実務ポイント

BCP(事業継続計画)を「災害マニュアル」として扱う企業は少なくありません。しかし、BCPの真の価値は危機時の動作ではなく、平常時の維持にあります。建物や設備が常に正常に機能することこそ、事業継続=企業価値の下支えです。

ここでは、BCPと建物保全を統合的に運用し、組織として成果を出すための3つの実務視点を紹介します。

優先順位の決め方と改修計画への反映

まず着手すべきは「何を優先して守るか」の明確化です。建物管理における優先順位は、次の3段階で設定します。

 

  1. 人命安全(命を守る機能)
    – 防火設備、避難経路、非常照明、耐震要素など。
    – これらは法定点検と連動させ、未是正ゼロを必達目標とする。
  2. 事業継続(止めない設備)
    – 配電盤・非常電源・空調・給排水など、業務に直結するインフラ。
    – 点検結果を中期修繕計画(3〜5年)へ組み込み、更新投資を前倒し管理。
  3. 企業イメージ・環境価値(魅せる機能)
    – 外観・共用部・照明デザインなど。
    – 更新時に省エネ・カーボンニュートラル化も同時検討。

 

この階層を社内で共有すると、修繕投資の「優先と後回し」が論理的に説明可能になります。BCP上も「命→事業→環境」の順でリスク対応を整理すれば、稟議や監査でも根拠ある判断が示せます。

点検記録をBCP報告書として再利用する

多くの企業が見落とすのが「BCP文書の更新コスト」です。年1回のレビューや監査でBCP資料を作り直すのではなく、日常の点検記録をBCP文書の裏付け資料として活用すれば、業務効率と精度を両立できます。

 

具体的には次の運用が有効です。

 

  • 建物・設備の点検報告書(消防・建築・電気・衛生)をBCP管理台帳にリンク付け
  • 重要設備リストに対し、点検結果のステータス(良/要是正/完了)を更新
  • 改修・更新工事の完了報告を「BCP改善履歴」として記録

 

こうして整理すれば、「BCP更新=日常点検結果の反映」というシンプルな仕組みになります。また、ISO22301(事業継続マネジメントシステム)やESGレポート作成時にも流用でき「安全・持続可能な企業運営」を数値的に説明できます。

 

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外部パートナー活用で持続的管理へ

BCP連動の建物管理は、一度の整備では完結しません。制度・災害・技術の変化に合わせて、毎年更新し続けることが求められます。そのため、専門業者を保守パートナーとして巻き込む体制が効果的です。

 

外部委託による運用メリットは次の通りです。

 

  • 点検+改修+BCP更新を一括管理
    → 定期報告書・修繕履歴・訓練記録をワンパッケージ化。
  • 担当者交代時も情報が引き継がれる
    → クラウド共有により担当者に依存しない管理が可能。
  • 補助金・保険申請にも即対応
    → 設備更新や耐震改修の補助制度に連携し、資金面の最適化も支援。

 

とくに中堅企業では、総務部門がBCPと建物保全を兼任しているケースが多く、外部専門家がBCP維持契約として年間点検と報告整備を担うことで、内部負担を減らしつつ継続性と品質を確保できます。

建物保全×BCP=企業ブランドの信頼性

BCPは危機管理の証明書ではなく、信頼経営の基盤です。耐震性・防火性・電源冗長性・衛生管理。これらの実践データは、顧客・取引先・社員に対する「安全と誠実の証拠」として機能します。

 

「安全を管理できる企業は、信頼を維持できる企業。」

 

建物の点検と改修をBCPの一部として体系化すれば、防災対策の域を超え、企業の社会的信用と持続可能性(サステナビリティ)を支える武器になります。

エースが守る「止まらない企業」――BCPと建物保全を両立する点検・改修計画づくり

エースが守る「止まらない企業」――BCPと建物保全を両立する点検・改修計画づくり

企業の事業継続には、建物と設備の“平常稼働”こそが最も確実な備えです。

 

株式会社エースでは、地震・豪雨・停電・感染症など多様なリスクに対応できるよう、BCP(事業継続計画)と連動した点検・改修の年間スケジュール策定を提案しています。建築設備定期検査(法第12条)や消防設備点検などの法定点検を基盤に、非常電源や排煙設備、換気・給排水系統といった“止めない設備”を重点管理。点検結果をもとに、優先度を「人命安全」「事業継続」「環境価値」の3段階で整理し、無理のない改修計画へ反映します。施工業者として、各種報告書や是正内容の作成・提出も迅速に対応し、BCP担当部門との連携を支援します。

 

災害時に建物を守るのは、平常時の管理体制です。株式会社エースは、企業の信頼を支える「安全・品質・継続性」を重視し、建物の健康を長期的に維持する施工をお約束します。

 

建物の点検・改修計画のご相談は、問い合わせフォーム・メール・お電話、またはショールームにてお気軽にお問い合わせください。

 

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